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として登場してきている。各国の累次の経済発展計画の中でも労働力の供給見通しが質的側面を強調しながら提起されている。
これまでみてきた、この地域の産業構造の変化のプロセスを労働力の質的側面と関連させて若干検討することにしよう。
東アジア、太平洋地域全体としては、人口の増加率は1970年代1.9%、80年代1.6%、90年代1.2%(予測)と低下しながらも比較的高いものとなっている。最近の20年間の実績によれば、人口増加率の3%から2%への1%ポイントの低下と1人当たりGNPの増加率の3%から6%への3%ポイントの上昇がほぼ見合うとされているように、人口増加は従属人口比率を高めるという面では経済水準の上昇にとっては負担であることは否定できない。このような事情があって、1960年代の人口爆発を受けたこの地域で人口抑制、いわゆる家族計画が積極的に取り組まれるようになった背景である。
国連の人口政策の支援もあって、アセアン諸国の合計特殊出生率(TFR)も60年の5人前後から90年にはマレーシア・フィリピンを除くと2人前後へと大きく低下している。この結果が上記した人口増加率の緩やかな低下へとつながっているのである。
しかしながら、人口増加のこれまでの効果は時間のズレをもって、経済発展へのインパクトをもたらす。さきにみた、70年代以降の人口増加率は、これを上回る労働力人口増加をもたらしている。労働力人口増加率は70年代の2.4%から80年代の2.1%、90年代の1.8%と人口増加率のそれを0.5%ポイント程度上回っている。この結果は、従属人口指数(従属人口(年少人口+老年人口)/生産年齢人口)の低下をもたらすことになり、当面の経済発展の負担を軽減させるところとなっているのである。
他方、労働力の質的側面からみれば、こうした若年層に依存するところが大きい労働力人口の増加は産業近代化への寄与を大きくするものである。近年の若年層の就学率は、いずれの国においても例外なく、中等教育、ひいては高等教育レベルにおける就学率を上昇させている。ドロップ・アウトの実態(就学率が100をこえる)も否定できないが、全般的な学歴構成の高度化は顕著である。専門化の程度の高い

 

 

 

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